第3回 WCG(WorldCommunityGrid)に参加する

どんな研究プロジェクトがあるの?

第2回でLinux(Debian)にBOINCソフトウェアをインストールしました。
今回からいよいよ研究プロジェクトに参加して人類の明るい未来に貢献してみましょう。

研究プロジェクトの種類

ところでBOINCを使った研究プロジェクトにはどんなものがあるのでしょうか?
生命科学系、天文学系、数学系……それこそ無数の研究プロジェクトが参加を待っています。一覧はこの辺を参照下さい(→BOINCstats/BAM! | プロジェクトの人気)

独断と偏見による研究プロジェクト紹介
プロジェクト名独断と偏見によるコメント
WCG(World Community Grid) IBMがスポンサーとなって主に生命科学系の複数の研究プロジェクトが集まったサークルみたいなもの。 1プロジェクトだけだと突然の打ち切りやサーバー死亡してトンズラ(?)の可能がなきにしもあらずだが、複数プロジェクトならその危険性も低くなる。 サイトも設定画面も日本語なので参加しやすい。人類の未来に貢献するならここが鉄板か。
SETI@home 宇宙のどこかに文明があるのならば、宇宙人は意味のある電波を発信しているはず。電波望遠鏡のデータを解析して宇宙人捜しをするプロジェクト。 日本からの参加者がとても多い。サイトの大部分は日本語化されているが設定画面は英語なのでちょっと大変。 宇宙に思いを馳せるロマン派のあなたに最適。
TANPAKU 日本人による研究プロジェクト。たんぱく質の解析を行っている。日本人がやっているから当然サイトも日本語対応。 しかし数ヶ月前にサーバーが吹っ飛んでそのままダンマリ。3ヶ月以上経つのになんの経過報告もない いい加減な運営にあちこちから非難囂々。 果たして復活するのか……それともこのままトンズラ?
Rosetta@home こちらも生命科学系プロジェクト。たんぱく質を解析してエイズ、ガン、アルツハイマーなどの難病と戦う新しいたんぱく質を設計するのが目的。 ショボイマシンでも十分に課題をこなすことができる。もし病気の友人がいるなら……あなたの参加が友人を救えるかもしれない。
Einstein@Home アイシュタインが一般相対性理論で予言した重力波の直接検出を目指す研究プロジェクト。観測では重力波があるらしいことは分かっているものの直接発見できればノーベル賞級。 課題が重いのでショボイマシンではキツイのが難点。高性能マシンを所有しているなら是非。
orbit@home 地球近傍の小惑星の軌道計算を行うプロジェクト。あなたの参加が人類滅亡を救うかもしれない。 しかし課題が超絶重いので自慢のマシンでないと計算が間に合わない。アルマゲドンに感動したなら是非。

この講座ではWCG(World Community Grid)、SETI@home、Rosetta@homeの参加方法をご紹介します。基本的にどの研究プロジェクトも参加方法に大した違いはありません。

参加できるプロジェクト数は?

ちなみに研究プロジェクトへの参加に制限はないようです。
しかしそれぞれの研究プロジェクトから配布される課題(「宿題」と呼ばれます)には提出期限が決められていて、どれぐらいの時間で宿題が終わるかはBOINCを動かしているCPU性能に依存します。

つまりCPUが高性能であればどんどん宿題をこなせるので複数プロジェクトに参加できます。逆にCPUがショボショボであれば参加するプロジェクトを1つか2つに絞った方が良いでしょう。

ちなみにこのnavi研サーバのCPUはVIA EPIA 6000(intelのCPU性能に換算するとCeleron 300MHzぐらい……orz)。
24時間動かしっぱなしという利点を考慮しても、参加している研究プロジェクトはWCG(World Community Grid)とRosetta@homeの2つだけです。
これで時には提出期限ギリギリになることもあります。

WCG(WorldCommunityGrid)プロジェクトに参加する

今回はWCG(World Community Grid)への参加方法をご紹介します。
2008年12月7日現在、WCGでは以下の研究プロジェクトが活動しています。

栄養価の高い米を世界に
米の生産量と品質の向上のために最適な手法を決定します。
がん撲滅支援
たんぱく質 X 線結晶構造解析の研究を進め、がんおよびがん治療に関する理解を増し加えることに努めます。
デング熱治療薬開発
デング出血熱、C 型肝炎、ウエスト・ナイル脳炎、および黄熱病の治療のための新薬を開発することです。
ヒトたんぱく質解析 - フェーズ2
ヒト・タンパク質と病原タンパク質の高度な分解構造を得ます。
FightAIDS@Home
HIV プロテアーゼをブロックするために適した形状と化学特性を持つ候補薬を特定することです。

WCGへ参加することでこれらの研究プロジェクトに参加することができます。全部参加しても良いしプロジェクトを選択することもできます。

メンバー登録画面 - WCG公式サイトにアクセスします。

アカウントの作成

アカウント情報を入力する欄がありますので、メンバー名(fig3.1 ①)、パスワード(fig3.1 ②)、メールアドレス(fig3.1 ③)を入力します。
メンバー名は後からでも変更可能です。とりあえず他の誰にも使われていない適当な名前を設定しておきます。ここでは"navi-labo"と設定しました。
メールアドレスはWCG以外の研究プロジェクトに参加する際に同じメールアドレスにすると、プロジェクト間で設定を共有することができます。

WCG アカウント作成
fig 3.1 WCGアカウント作成

情報(fig3.1 ④)にはチェックを入れる必要はありません。 ご使用条件(fig3.1 ⑤)にチェックを入れて「続く」ボタンを押します。

参加するプロジェクトの選択

次の画面では参加するプロジェクトを選択します。チェックはいくらでもいれることが出来ます。

WCG アカウント作成
fig 3.2 参加プロジェクトの選択

欲張って全部参加するのもどうかと考えたので、ここではFightAIDS@HomeとHelp Conquer Cancer(がん撲滅支援)の2つにチェックを入れました。
ちなみにこの参加プロジェクトも後から自由に変更できます。まずは自分が役に立ちたいと思うものだけに参加するのが良いと思います。

チェックを入れ終わったら「続き」ボタンを押します。

次にBOINCのインストールについての説明が出てきますがここでは既にLinux版BOINCソフトをインストール済なので以降は設定する必要がありません(この時点でアカウントの登録は完了しています)。
ブラウザを閉じるなどしても大丈夫です。

WCGにサインインする

サインインするにはWCGのトップページにアクセスします。
ページ右上にサインインする箇所がありますので、fig 3.1の①と②で入力したメンバー名とパスワードを入力して、「サインイン」ボタンを押します。

WCG トップページ
fig 3.3 ここからサインイン

正しいユーザ名とパスワードを入力すればサインインできるはずです。

BOINCにWCGのアカウントを設定する

さて、ここまでWCGへの参加は完了しました。しかしLinuxサーバにインストールしたBOINCは、まだWCGに参加したことを知りません。
BOINCにWCGのアカウントキーを登録して一連の操作は完了します。

まずアカウントキーはWCGのマイ・プロファイルページにあります。
「アカウントキーってメンバー名とパスワードじゃないの?」と思うかもしれませんが、アカウントキーは各研究プロジェクトごとに一意のキー(数字と記号の羅列)が発行されます。

WCGサイトにサインインします。

「マイ・グリッド」メニューを選択します。(fig3.4 ①)
左側メニューで統計→マイ・プロファイルを選択します。(fig3.4 ②)

WCG マイ・プロファイルページ
fig 3.4 マイ・プロファイル

もし国が「日本」に設定されていなければ「日本」に設定します。(fig3.4 ③)
WCGでは貢献度(=宿題をこなした量)を国別で統計を取っています。「日本」と設定することによって大和魂を世界中にアピールすることが出来るのです。
ちなみにメンバー数で言えば日本は2008年12月7日現在世界第4位(12,902人)。第1位のアメリカが55,735人となっているので、まだまだ参加者は少ないのが現状と言えるでしょう。

アカウントキーはBOINCアカウント・キー(fig3.4 ④)欄に書いてあります。このBOINCアカウント・キーとBOINCプロジェクトURL(www.worldcommunitygrid.org)をメモしておきます。

国情報など設定を変更していたら「保管」ボタンを押して設定を保存します。

メモったアカウント・キーをBOINCクライアントに設定します。boincクライアントを利用するには、boinccmdコマンドを使います。
アカウント・キーを設定するには--project_attachオプションをつけます。

書式は、
boinccmd --project_attach [プロジェクトのURL] [アカウント・キー]
の形式になっています。WCGであれば

$boinccmd --project_attach http://www.worldcommunitygrid.org 123456789abcdef123456789abcdef12

こんな感じになります。
WCGに参加できたか確認してみましょう。設定を確認するには--get_stateオプションです。

$boinccmd --get_state
======== Projects ========
1) -----------
name:
master URL: http://www.worldcommunitygrid.org/
user_name:
team_name:
resource share: 100.000000
user_total_credit: 0.000000
user_expavg_credit: 0.000000
host_total_credit: 0.000000
host_expavg_credit: 0.000000
nrpc_failures: 0
master_fetch_failures: 0
master fetch pending: no
scheduler RPC pending: yes
attached via Account Manager: no
tentative: no
suspended via GUI: no
don't request more work: no
disk usage: 0.000000

======== Applications ========

======== Application versions ========

======== Workunits ========

======== Results ========

どうやら表示されているURLを見る限り、WCGへ参加できたようです。
しかし表示のほとんどが0とかnoになっているのが気になりますが……。

ひとまずこれでWCGへの参加は完了です。あとは放置プレイで宿題が勝手に落ちてくる……はず。
落ちてこなかったらWCGサイトで設定を変更するなどして試行錯誤して下さい。
早く宿題落ちてこーーい。