第6回 蘇るRPGツクールDante98

RPGツクール Dante98

骨董品データ

商品名 RPGツクールDante98
発行 アスキー出版局
定価 5,500円
コメント PC-9801でRPGがお手軽に作成できるツール。これ以降RPGツクールシリーズはあらゆるハードで発売される。

君もゲームを作ってみないか?

プレイステーションなどのコンシューマーゲームやパソコンのゲームをやったことある人の中には一度は「自分でゲームを作ってみたい!!」と思ったことがあるかもしれません。

筆者もかく言うそんな人間の一人でした。
当時スーパーファミコンを家庭の方針から買ってもらえず、ゲームやりたさに親を騙してパソコンを買ってもらうことに成功した私は、 マイコンベーシックマガジン(通称:ベーマガ)などに掲載されていた読者投稿のゲームプログラムを懸命に打ち込んでは、
「いつかゲームを投稿して掲載料をせしめてやる」
と密かに野望を持っていたものでした。

そんなある日、私は高校の同級生からある話を持ちかけられました。
「RPGツクールっていうソフトが本屋に売っているんだけど、金を出し合って買ってみないか?」

同級生が本屋で立ち読みした情報によれば、そのソフトを使えばRPG(ドラゴンクエストに代表されるロールプレイングゲーム)が簡単に作れるらしいのです。
友人から話を持ちかけられたそのソフトこそが、現在に続くツクールシリーズの元祖(※)と言われるRPGツクール「Dante98」。

(※)ツクールシリーズの元祖…Dante98自体MSX(パソコンの一種)上で動いたDanteのPC-9801移植版なのですが、RPGツクールという名称がついたのは、Dante98が初めて(wikipedia)

当時はDante98以外にも「チャイムズクエスト」などRPG作成ソフトはあったのですが、自分でお絵かき、自分で作曲、自分でプログラム・・・と私のような田舎育ちのペーペーには相当敷居が高いシロモノでした。

友人の提案に一も二もなく飛びついた私でしたが、Dante98の定価は5,500円。
2人で折半して2,750円。
貧乏高校生にはなかなか敷居の高い価格でした。
結局私が本(説明書)と3.5インチのフロッピーディスクで3,000円、友人が5インチのフロッピーディスクのみで2,500円それぞれ出し合って購入した気がします。

Dante98のフロッピーディスク
fig 6.1 5インチディスクは友人が所有している

簡単に作れる、だからツクール

それでは早速、説明書中の"「RPGツクール Dante98」の全貌"からDante98について見て行きましょう。("「RPGツクール Dante98」の全貌"より)

Dante98の特徴はRPGツクールの名に違わず、説明書を見る必要がないぐらい簡単にRPGが作成できるという点に尽きるところにありました。

ゲーム作成ツールにはありがちな、またほとんどの人は敬遠する「スクリプトコードを打ち込む」という概念を徹底的に排除して、プログラムしていることを感じさせない作りにしたことは見事です。
やはり"直感的に理解できて、すぐ使える"というコンセプトがヒットした要因ではないでしょうか。

そして何よりも一番大きかったのが、私に欠けている絵心と音楽的感性がなくてもRPGが作成できるところにありました。

随所にドラクエチック?

ところでDante98の説明書を眺めると、随所にドラゴンクエストの影響を受けていることに気づきます。
まず「主人公キャラの初期設定」画面で「レベルアップパラメーターの簡易設定」という機能があるのですが、モデルパターンとして用意されている職業が「英雄」「戦士」「魔法使い」「僧侶」「賢者」「盗賊」の6種類。

Dante98の説明書 職業の選択
fig 6.2 職業を選択する事でオススメの数値が設定できるのだが……

しかし冷静に考えてみれば、戦士や魔法使いなどは職業として容認できるもの、職業「英雄」とか職業「盗賊」って……なんなんでしょう、この違和感は。

「あなたのご職業は……」
「は、私は英雄をやっております」
って、ただのホラ吹き野郎としか思えませんが。私だったら自ら英雄と名乗る人間にはついていきません。絶対に。
それに職業「盗賊」って犯罪者ですか?

また「敵キャラの編集」画面で「戦闘方法の設定」という機能では、敵が実行する攻撃方法が選択できるのですが、「自爆する」とかやっぱりドラゴンクエストの影響を受けてますよね。
これってメガンテ?

Dante98の説明書 戦闘方法の選択
fig 6.3 多彩な戦闘方法が選択できる

カンタン・・・ゆえの限界

しかし簡単に作成できるということは、その反面自由度が少ないということでもあります。
わざわざグラフィックを用意してもらって難癖つけるのもなんですが、敵キャラの数が少ない(最大5パーティーで敵キャラの数が48種類ではすぐに尽きる)とか、主人公の移動速度が遅い、自分のイメージに合った曲が少ない……などなど作り出すと出るわ出るわ不満の優勝パレード。

やはり自分が思い浮かべる壮大なシナリオ(笑)に耐えうるためには絵心がなければいけないのでしょうか……。

Dante98の説明書 グラフィックツール
fig 6.4 別売のソフトで絵は描けるが最大の難点は絵心か

最強の敵は自分。そして根気

友人とお金を出し合って購入した日から、私は寝る間を惜しんでRPG作りに励みました。しかし一つも完成させることはありませんでした。
構成段階で大風呂敷を広げすぎた事と、そして何よりも自分の根気が続かなかったためです。
最強のラスボスは自分の心の中にいました。

そしてその時思ったことが一つあります。
世間ではクソゲー(※)と呼ばれる作品が出回っていますが、一つもゲームを完成させることができない私にはゲームを批判する権利はないなと。

(※)クソゲー……糞のようなゲーム。つまりユーザーからの支持がないゲーム

私は最強のラスボスに勝てなかった自分が今も心のどこかでチクリと痛む。

おまけ

もうこんな本どこにも売っていないだろうと思っていたらAmazonでまだ売っていました。
Dante98で自分だけの世界を築いてみては如何でしょうか。

RPGツクールDante98―PC‐9801でキミだけのオリジナルRPGが簡単に作れる
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