正月の風物詩である箱根駅伝は東洋大学が歴史的な快挙で往路優勝を果たしました。
関東以外ではほとんど知られていない(※1)箱根駅伝。
(※1)ほとんど知られていない……むかし関西で知り合った人に箱根駅伝の事を話したら全く知られていなくて驚いた。
実は筆者の家から箱根駅伝コースである国道1号線からはそこそこ近い場所にあるのですが、なにぶん出不精なもので毎年テレビ観戦(※2)で終わっていました。
(※2)テレビ観戦……筆者の出身校と弟の出身校は駅伝の常連校なので、正月の駅伝応援は欠かせません。
せっかくなので今年は近くまで見に行こうかとなんとなしに話はまとまり、沿道まで応援に行ってみることに。
「テレビには放映されない箱根駅伝」
新春一発目のネタは箱根駅伝の現地応援レポート。
筆者の家が国道一号線から近いと言っても車で20分程度の場所にあります。
選手たちが遙か遠くを走っている頃に自宅を出発。当然どこかで車を止めなければならないのですが、その辺はお決まりの「なんとかなるだろう」思考で特に何も考えずに自宅を出発。
いつも勉強している隣町にある生涯学習センター横の臨時駐車場が空いていたので、そこに車を止めて徒歩で国道一号線まで向かう。徒歩8分ぐらい。
どうやら駐車場に車を止めている連中は皆駅伝の応援らしい。ぞろぞろと結構な人数が一号線方面に向けて歩いていました。
途中、親から「平塚中継点を通過した」とのメールを受信し少し焦る。自然と小走りになった。
沿道の人々
箱根駅伝をテレビで見たことある方は沿道でみんながワーッと振っている旗を知っているかと思います。
あの沿道で振っている旗はどこで貰えるのだろうかと気になっていました。が、沿道に着いたときに正月早々駆り出された読売新聞販売員と思われるオッサンたちが道行く人に旗を大量に配っていました。
応援旗が全て紙で作られているのに驚いた。持つ部分はプラスチックかと予想していたのですが、これも昨今流行の"エコ"というやつか。
ついでに出身大学の応援旗も欲しかったのですが、大学関係者の姿が見えなかったので貰えずじまい。ザンネン。
ここはテレビ中継ポイントではないようで、群衆と言っても十重二十重といるわけではありません。結構直前だったにもかかわらず最前列に陣取ることが出来ました。
"最前列"とは言うものの本日は往路にて選手たちが実際に走るのは反対側の車線。で、反対側の車線はさすがに人がぎっしりで最前列に行けそうもなく、しかも警察が交通規制をしていて容易には渡れない。
上空には抜けるような青空に溶け込むように中継用のヘリが待機していた。
交通整理の警察官が「沿道の皆様、応援ご苦労様です。あと10分ほどで先頭集団が通過します」と盛んに拡声器で喋っていた。
左隣には中年夫婦。さらに左には親子連れがいた。親子連れの方のお母さんは熱心な神奈川大学ファンのようだった。2人の小さい兄弟たち(一人は上の写真左側に写っている)が「神奈川大学」と書かれたビブスのような服を着させられていたからだ。
(子どもは何が何やらわからんだろう……)
一方右隣は中年夫婦。さらに右には大沢親分を連想させるような着物を着た爺さんだった。爺さんは右隣の中年夫婦に熱心に箱根駅伝の蘊蓄を披露していた。
耳をダンボにして聞いてみれば爺様の生家がすぐ傍にあるらしい。物心着いた頃から箱根駅伝を応援し続けていたのだろう。
「○○は凄い奴だよ」とか「だいたい何分ぐらいの通過だ」など、直前の順位から各校の選手の名前までマニアックなほどよく知っていた。その爺さん、特定の大学を贔屓にしているわけではなく箱根駅伝を愛して数十年……とでもいうぐらい、「箱根駅伝愛」が言葉の端々に伝わってくるようだ。又聞きだけど。
直前の様子
一台の白バイが走ってきた。
その白バイ警官はバイクにまたがったままマイクで注意事項を喋り始めた。
「まもなく"規制"とステッカーが貼られたパトカーが通過します。そのパトカーが通過してからおよそ3分で先頭集団が通過します。 パトカー通過後は道路を横断できません。交通規制がかかりますのでご注意下さい」
2回ほど繰り返した後、白バイは走り去った。
白バイが走り去った後、少しして"広報車"と書かれた車が数台通り過ぎていった。そしてさらに数台白バイに先導されて、"規制"ステッカーが貼られたパトカーが通り過ぎた。
いよいよだ。
群衆も次第にざわざわと騒がしくなってきた。
旗振る人 絶叫する人
遠くの方から背の高いバンが対向車線の車の陰に見え隠れし始めた。中継車だ。
沿道の連中が一斉に旗を振り出す。カサカサと紙のこすれる音があちらこちらから聞こえてきた。
そして先頭を走る選手たちが見えてきた。
わーわーわーわーわーわー。
がんばれー。
そんな声援がそこかしこから聞こえた。
しかし選手たちは速い。あっと言う間に通り過ぎた。
言われてみれば当たり前なのだが、テレビで見ていると沿道の人たちはずっと旗を振っているように見える。
しかし実際には旗を振るのは選手が通過している間だけ。
わーわーわーわーわーわー。
がんばれー。
(選手通過後)
「………………………。」
実際はこんな感じ。そりゃ選手がいない間に旗振って声張り上げてもしょうがないわけだけど、テレビから受けるイメージとのギャップに驚いた。
先ほどの早稲田大学と山梨学院大学の選手の後は大きく差が開きすぎていたのか、後続がなかなか来ない。
「つぎは団子だよ」
これは駅伝大好き爺様の言。
その予言通り次は団子状態の3位集団が殺到(動画約4秒)
この団子状態の後はポツリ、ポツリと選手たちが通過していった。
そして青いユニフォーム姿の選手が通り過ぎたときだった。
「きゃあああぁぁぁああ!!!神大ガンバレエェェェェ!!!」
何事かと絶叫の方を見てみれば、やはり左2つ隣の神奈川大学ファンのおばはんだった。なんとも判りやすい。
沿道の声援は神奈川大学のときが一番盛り上がったように思えた。さすが地元大学。その割には湘南ベルマーレの応援はイマイチのような気がするのだが。
ちなみに左の夫婦は拓殖大学。右の夫婦は早稲田大学。みんなそれぞれ贔屓チームがあるようだった。
まぁ贔屓チームがなければ正月にわざわざ応援になんて行かないのだろうけど。
終わりはあっさり
全選手が通過してしまえば、もうやることはない。
最後尾のパトカーのすぐ後ろには20人程の自転車乗りたちが手を振りながら追尾していた。ただのサイクリング同好会のようだ。このまま箱根までついて行くのだろうか。
「終わり?」
「終わりみたい」
あちこちからそんな声が聞こえ出し「さ、帰(けぇ)るべ」と言わんばかりにぞろぞろと帰ってゆく。
この間わずか30分程度。
ところでお前は応援したのかって?
団子集団の中に母校の選手がいたので「がんばれー!」など柄にもなく声を張り上げたら一発で喉がおかしくなってしまい、後は旗をパタパタ振っているだけだった。
応援なんてそんなものです。
「駅伝愛」の爺様といい、神奈川大学ファンおばはんといい、箱根駅伝は地元住民に愛されてこその駅伝かな。
そんな想いを新たに家路についたのでした。
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