とあるお客様からサイトをマイナーチェンジしたいというお話を頂いた。
マイナーチェンジの作業内容にはサイトで使われているFlash修正も含まれているのだが、 そのFlashの元データをお客さんは持っていないと言う。 元データがなければ修正もできない。
では、元データはどこにあるかというと、初めにサイト制作を請け負ったデザイナーさんが持っているらしい。 社長がそのデザイナーさんと知り合いだったので、元データをくれるようお願いすると、
お客とそういう契約(※1)を交わしていない。だから元データの提供はできない。提供するのだったら○万円で買い取れ」
(※1)そういう契約……中間制作物(この場合はFlashの元データ)も納品するという契約。"一式納品する"という契約だったらしい。
足元を見られたような(※2)ふざけた回答が返ってきた。 しかも元データを持っているデザイナーさんに修正を依頼した場合「フタケタ万円かかる」らしい。
(※2)足元を見られたような……ものの本には、中にはそういうデザイナーもいるのでその場合はいくらか買い増しして、 元データを買い取ることになる。と書いてある。
Flashは作ったことないので正確なことはわからないが、文章の内容を少し変えるだけでなんでフタケタ万円もするのか。 1文字いくらなんだよ、ああ?ありえないだろう、常識的に考えて……。
こちらとしても違うデザイナーさんに作業を依頼しているため、元データを持っているデザイナーさんに頼むつもりはさらさらなかった。 お客様には申し訳ないが社長と相談した結果、見積りに元データの買い取り価格を上乗せする形で見積書を出させてもらった。
作業をお願いしているデザイナーさんに聞いてみても、元データを提供しないなんてことは通常ありえないとのこと。社長もそのデザイナーさんは悪い人ではないと言うが、話を聞く限り(←私はその人に会ったことがない)印象は最悪。そんなに高い金取るのだったらちゃんとしたFlash作れよ。このFlashバグってんだよ!
-以上、事情説明-
あまりの理不尽な話しに腹が立ってしょうがなかったが、一から作り直している時間はなかったこともあり、 本に書いてあったことから○万円の無駄な出費は悔しかったがそれで手打ちにできるのなら……と半ば諦めていた。
ところが社長はこのまま引き下がるのは許せないと思ったからか、その日の夜中まで執拗に捜し続け、 ついにこんな資料を引っ張り出してきた。
2.一般に、注文者の依頼により雑誌を印刷、製本する行為は請負にあたり、その依頼を受けた者は、注文者の求めに応じて雑誌を印刷、 製本の上、これを注文者に交付して請け負った仕事を完成すれば足り、これにより報酬請求権を取得する。 しかし、請負人が請け負った仕事をする過程で自己の材料を使用して作成した物品は、それ自体として請負の目的物ではないから、 契約当事者間でその所有権について別異の合意をするなど特段の事情がない限り、その所有権は請負人に帰属し、 請負人がこれを注文者に引き渡す義務はない。 本件製版フィルムは、印刷工程において印刷物完成のために作成される中間生成物であるから、原則として印刷業者の所有に帰属し、 契約当事者間でその所有権や交付について別異の合意をしない限り、印刷業者はこれを注文者に引き渡す義務を負わないというべきである。
製版フィルム廃棄損害賠償請求事件判決■裁判所の判断
これによれば中間生成物(=この場合はFlashの元データ)は"渡さない"という契約がない限り、納品先に著作権があると述べられている。 地裁レベルの判断だが。これを盾にすれば○万円が半額ぐらいになるんじゃないか、と社長は言う。 そこで以前客先に納品したファイル一覧リストと見積書、著作権が自分のところにあると客観的にわかる資料をまとめて示せと、 メールを送りつけてやった。
なるほどこのあたりが商売人として素質のある社長と凡人(むしろダメ人間?)の自分との違いだろうか。 ……この商売人として姿勢は見習わなければな。
果たして吉と出るのか凶と出るのか。結末はまだまだ先になりそうだ。
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