大手マスコミはほとんどスルーしたので、気付いていない方も多いと思いますが、三菱東京UFJ銀行は12月15日に旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行に分かれていた勘定系システムの統合を完了。
経営統合発表から約4年半。総費用3,300億円、携わった技術者6,000人。開発工数14万人月(※1)というシステム系では史上空前の大プロジェクトは最初以外は大きな障害もなく、むしろ大成功の部類に入るのではないかと思います。
(※1)14万人月……"ある仕事を1人でやったら何ヶ月かかるか?"の観点で計算する見積り方法。1人で14万ヶ月相当ということは、、、11666年w
三菱東京UFJ銀行の回し者ではないけどさ。
ネットで統合完了のニュースを知ったときに心から感動した。
システム開発の同業者として心から「おめでとうございます。お疲れ様でした。」と賛辞を贈りたい。
銀行は過去に合併、合併を繰り返して現在の形になった。
合併のたびに全員分の口座情報を引き継ぎ、システム統合を繰り返してきたはずです(銀行の提携・合併リスト)。
そしてもはやこれぐらいの段階となると社内にシステムの全体仕様を把握している人間なんて誰もいないことは容易に想像がつきます。
その中で今回の統合完了。
大きな障害もなく完了できたのは関係者全員の努力の賜であって、もはや奇跡と言ってよいレベル。
このニュースを大手マスコミはなぜ大きく取り上げないのか。
2008年5月12日の第1回目統合のときには、約5時間にわたってセブン銀行のATMから2万件の取引ができなかったことがありました。
当時マスコミは鬼の首を取ったかのように「統合初日から障害発生」など大々的に報じた。その挙げ句、金融庁長官だったか誰か出てきて遺憾の意まで表明し出し(記者会見-金融庁)トップが謝罪する事態になったことは未だに忘れない。
4年半、3,300億円、6,000人、14万人月……。
数字だけ見ると一見「かかりすぎだろ」と思うかもしれないが、現行のシステムを停止させずに、障害も発生させず統合をしろ などという無理難題を解決するためには、これぐらい工数と費用をかけなければならないのだろう。
しかしそんな簡単な事実をわかっていない連中が多すぎる。
ナントカ長官を筆頭に周囲の客にも。安くて短納期でも不具合のないシステムぐらい簡単に作れるだろう。そんな風に考えている連中が多いからこそ「現代の奴隷」「ITドカタ」「新3K」なんて揶揄されたりするんだ。
上手くやったことは当たり前、失敗すれば袋だたき。
いつからそんな世の中になってしまったのだろう。いつから上手くやったことを「やって当たり前」の一言で片づけて誉めなくなってしまったのだろう。
会社しかり、子育てしかり。
今回の統合完了は間違いなく「プロジェクトX」で取り上げられるべき仕事だと思う。
マスコミ筆頭に誰も誉めないからこの記事で誉める。絶賛する。
日本のシステムエンジニア集団の矜持を見た。
かなり古いものになるが日経BPで谷島宣之という方が「6000人が作ったシステムは必ず動く」を書いていたので、ご一読されることをオススメします。
第四に,本来ならどうでもいいことだが,本プロジェクトの失敗を切望している新聞やテレビをがっかりさせたい。
(中略)
新聞やテレビは,小さいトラブルや些細なオペレーションミスであっても「初日から障害」などと報道するだろう。 昨今は,小さなトラブルでもユーザー企業が自ら公表するから取材をする必要もない。無いものねだりになるが,できる限りミスを減らし,新聞やテレビに地団太を踏ませて欲しい。
そう、まさにこの心意気なのだ。
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