「ええい……あのチョコボールを討伐せねば夜も眠れぬわ!」
前回、完膚なきまでに飛竜【イャンクック】にやられて村にすごすごと退却する屈辱を味わいました。 ヤツに近づくと、尻尾をブンブン振り回してなぎ倒される”尻尾アタック”は要注意です。
"尻尾アタック"→地面に叩きつけられる→"突進"→巻き込まれて瀕死。
または、
"尻尾アタック"→地面に叩きつけられる→"連続ついばみ攻撃"→脳天ザクロ状態。
という痛いコンボに持ち込まれてしまい手も足もでません。 やはり1人でヤツを討伐するのは能力の限界なのでしょうか。そんな考えさえ脳裏をよぎります。
「あの尻尾さえ攻略できれば……」
そんな【イャンクック】攻略に頭を悩ませていたある日。
インターネットの攻略サイトとある情報筋より極秘情報を入手しました。
"90度づつ体を回転させて尻尾を振り回す攻撃は必ず反時計回りにしか行わない。そのため【イャンクック】の左側面から攻撃すればダメージを受けることはない……"
「それじゃ!」
ヤツの弱点を知ったからには、いても立ってもいられません。 さっそく防具、武器、回復アイテム一式ひっさげて【酒場の娘】に討伐の依頼を斡旋してもらいました。……チョコボールの化け物よ、首洗って待っていろ。
【密林】に分け入ると、ヤツがいそうな場所を片っ端から捜索。 チョコボールの化け物はいました。大きな二本足でゆっくりと闊歩していました。まるで自分が密林の王者だと言わんばかりに。 やがてこちらの姿を確認すると、翼を2,3回羽ばたかせて甲高い奇声を発した。
リベンジへの戦いが始まりました。
ヤツはいきなり口から炎を左右に飛ばしながらこちらに向かって突進。一気に間合いを詰めてきた。 素早く横に転がりなんとか回避……したつもりが、避けきれずまともに攻撃を食らって巻き込まれた。 2度3度と横転を繰り返し、なんとかヤツの足下から脱出。盾を構えヤツと対峙した。
情報の通りヤツは反時計回りにしか体を反転させていない。円を描きながらヤツの周囲を走り、必ず左から攻撃をしかける。 作戦はこれしかない。
ところがこれまでの戦いの経験から右側面から攻撃する癖(※1)がついてしまっていました。
(※1)右側面から攻撃する癖……コントローラの操作に慣れないために右側からしか斬りかかれないorz
しかしどうにかするしかない。左からの攻撃するより他に勝利への道はない。 状況判断に余裕がないため、何度か悪い癖が出てしまい幾度となく食らう尻尾攻撃。 しかし意識的に攻撃方法を変えたことで、以前よりは善戦しているように感じました。
一歩も気を緩めることができない時間が続く。 刹那、ヤツはしびれを切らせたのか巨大な翼を羽ばたかせると上昇し始めた。
「逃がすかっ!」
走り込んで飛び立とうとする足に剣を突き立てようとするが、翼を羽ばたかせることで生じた暴風により近づくこともままなりません。 そしてヤツはどこかへ飛び去ってしまいました………。
飛び去った後はこれまでの喧噪が嘘のように、浜に打ち寄せる波の音と鳥の囀り、そして風の音が鳴り響くだけの静けさがそこにはありました。
しかしボーッとしているわけにはいきません。 どういうシステムか判りませんが、狩りの制限時間は50分と決まっており制限時間を過ぎると仕事は失敗となってしまうのです。 こっちがわざわざ危険を顧みずモンスターを討伐してやっているにも関わらず。理不尽極まりない。
そんなことを嘆いていてもリミットは刻一刻と近づいてきます。 しかもチョコボールの化け物は頻繁に飛び回っているのかどうか、一向にその姿を補足することが出来ません。 ようやく見つけたと思ったのも束の間「ここで会ったが100年目」と勝負を挑んでも、そのうち大空にその姿を消してしまいます。
ヤツの姿を求めて、ただ【密林】を走り回る。 しかしその姿はどこにも見えぬ………迫り来る刻限。焦燥は隠しきれません。 奇跡を信じてスタミナの続く限り【密林】を駆けずり回ります。
しかし…………ああ、時間切れ。またしても【イャンクック】に敗北を喫したのでした。
こうなったらもう親の敵も同然。三度目の対決。 今度はしこたま【ペイントボール】(※2)を持ち込み、万難を排して対峙します。
(※2)ペイントボール……モンスターに投げつけると破裂して塗料を付着させる球。どういう原理が不明だが付着した塗料により何故かモンスターの現在位置が判る。GPS機能付き?
相変わらずヤツの攻撃は強烈です。うっかり"連続ついばみ攻撃"や"尻尾アタック"を食らってしまうと体力をごっそり減らされます。 多少防具を強化したはずですがダメージが和らぐ気配は一向にありません。
しかし何度か対決していると特徴がなんとなく見えてきます。 ヤツが突然、首を低くして「クケケケケ………」といななくときは絶好のチャンスだということが判ってきました。いななくときは大きな隙が出来るのです。 円を描いてヤツの周囲を走りながら、隙が出来るのをじっと待ちます。辛抱強く、我慢強く。
一瞬たりとも気が抜けません。 何度も仕掛けてくる攻撃をかわしながら、隙を見つけると全力で足下に駆け寄り無我夢中で剣を振るう。 ささいな隙を見つけては回復薬で己を励ます。 いつ終わるか判らない戦い。 逃げれば追い、追われれば逃げる。
精も根も尽き果てようかとしたとき………大きく横に振り払った剣がヤツの致命傷となった。 その巨体を支えるにはあまりに細い足が力を失い、そのまま崩れるようにしてその体を地面に横たえました。
ついに……。三戦目にして【イャンクック】を討伐。 これで名実ともにハンターの仲間入りです。しかし今からこんな調子でこれから大丈夫なのでしょうか……。
「三戦目どころか、実際にはその2倍負け続けていたことは秘密じゃ」
(つづく)
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