顧客から緊急対応の不具合修正が来たってよ。今年の頭から地獄を見たプロジェクト。いったいいつまで続くのだろう。まるで頂上の見えない山を延々と登っているようだ。
ところで今の日本は好景気らしい。ただ弊社に限って言えば景気の動向には全く無関係だと言える。不景気の時は当然利益が出ないが、好景気になっても儲からない。
推測だが好景気なのはごく一部の大企業だけだろう。 日本のIT産業の根幹を成す全国数千社に及ぶ弊社のような下請け企業。なぜ弊社の利益ははいつまでたっても上がらないのか。素人なりに少し考えてみたい。
弊社は社員40名足らずのベンチャー中小企業だ。IT産業界でピラミッド状のヒエラルキーを成しているとすれば、最も底辺に位置する。
この最下層の企業群はだいたいにおいて製品を欲している顧客と直接相手をすることはなく、製品を欲している客から仕事を請け負った企業を顧客相手としている。
そして最下層に位置する企業は大抵、仕事を請け負う際に"人月計算"という悪しき方法により見積もりを出して金額を請求する。
人月計算とは、この仕事をやり遂げるには5人で担当して3ヶ月かかります(=15人月)。ウチは1人月あたり100万円ですので全部で1500万円となります。 ・・・こういう見積もりを出すのだ。
我々末端の人間は技術なんか売っちゃいない、時間で人身売買されているのだ。なぜこんなドレイ的な計算方法がまかり通っているのか、 それは顧客を説得しやすいからだ。
1人月計算で100万円。そのうち社員の月給を40万円とすれば残りの60万円はまるまる会社の利益となる。 社員全員が仕事がない期間を空けることなくコンスタントに仕事をこなせば社員数が多ければ多いほど会社は利益が上がる。 簡単な算数だ。ところが事はそんな単純な話ではない。
我々が相手をする顧客は製品を欲している(が専門知識がない)顧客が相手ではなく、製品を欲している顧客から仕事を請け負った企業が顧客だと先程書いた。 つまり相手にする顧客は言ってみれば同業者。その道のプロなわけだ。「やろうと思えばうちで出来るけど人手不足だし…だから下流工程(=我々のような末端)に流してしまえ」という訳で末端に仕事を回してくれるわけだ。 そのため末端が出した見積もりがそのまま通ることはまずない。だいたい「そんなに期間がかかるはずはない」などと難クセをつけられ期間が削られる。 中には初めから無理なことを承知で「この期間でやってくれ」と無茶苦茶な納期を提示されることがある。初めから足下を見られているのだ。
末端としては多少無理な要求でも呑まざるを得ない。なぜなら仕事を選り好みしている余裕がないから。しかし提示された納期にはとても全部間に合わないから「ではテストはそちらでやってくれ」などと言って少しでもこちらの負担を軽くするよう交渉する。 それでも納期的には初めから余裕はない。さらには顧客が要求する仕様がてんで話にならなかったり矛盾だらけだったりして設計段階で二転三転。二度三度と仕様変更を繰り返している内に製作期間はどんどん食い潰されていく。 しかし納期を遅らせて良いという話には滅多にならないので、こちらとしては残業・休日出勤を繰り返しなんとか間に合わせるよう努力する。 当然、ドレイが馬車馬のように働いても会社としては利益が上がるわけではない。
馬車馬のように働いても納期に間にあうかどうかギリギリなので、社内テストもロクにできないまま"とりあえず作りました"状態で納品することになる。 ここで人身売買された期間は終了。
ところがテストもロクにやっていないで納品するので、顧客のところでテストをすれば当然のように不具合が山のように出る。その不具合の修正はどこがするのか。 製作したウチが直すことになる。もちろん不具合は直さなければならない。信用問題に関わるからだ。しかもこの期間は無償となる。 この間、ドレイは一生懸命働いているが会社には一銭も利益が入ってこない。会社から見れば社員が仕事しないで遊んでいるのと同じ状態になる。
いつまでも不具合修正ばかりやっていても利益が上がらないので適当なところでドレイたちは次の仕事に携わる。しかし今日みたいに"緊急対応"が来れば対応せざるを得ない。 今の仕事も期間的にカツカツの状況でやっているので、ドレイたちが分担してなんとか緊急対応を割り込ませる。その分、残業が増える。
会社としては当然顧客に文句を言う。「初めから納期がキツく、しかもあなたのところの仕様がいつまでたってもまとまらないから製作期間が短くなった。 おかげで不具合修正の期間は無料奉仕になったじゃねぇか。( ゚Д゚)ゴルァ!!」
ここで追加請求が認められればよいが顧客にも予算というものがある。「今回のプロジェクトでは当初の見積もりで予算を使い切ったのでない袖は振れない。 次の仕事では今回余分に発生した費用を上乗せして構わないから」結局こんなグダグダな展開で話がまとまる。
しかし次の仕事でも結局、足下を見られた工数を提示され・・・→以下、無利益スパイラル。
そんな江戸時代の農民のような「生かさず殺さず」状態のため、弊社の利益は上がらず挙げ句、年俸制導入→残業代ゼロ→給料10%カット→退職→残りのドレイの負担増→退職→・・・以下、無限地獄
問題はこんな単純な話ではないだろうが、今のところ見えているのがこの状況。まさに弊社無限地獄。
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/\ ∧_∧ /世間は不景気だ。
/無茶な\/\ (@∀@-)< でもウチの会社は大丈夫。
|\ 納期/ \/\ ( .) \ みんなもっとガンバロー。
/\ \ |\ /値引 \/\. \____________
/ \ | | \ |\ き/年俸 \/\
|\ / .| \ |\ 制 / \ /\
/ \ \/ | \ |\ /ルール \/\
/休日 \ | .| \ |\ ナシ / \/\
|\ 出勤/| \|\ / . \
| \ //\ 弊 社 無 限 地 獄 \ /役職付 .\
| |/ \ ウワァン! /\ 多すぎ >
| \ /| ヽ(`Д´)ノ / \ /.|
| \ //\ / ( ) .\ 残業 \ / .|
| |/退 \ /\ / < ヽミ3 \ 代0 /| / .|
| \ 職 /| /\/ \ 鬱病 \ /| / |
| \ / /\/ \10%カット \ /| / |
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| \ 下 請 \ / | / .|
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