円満退職とはかくも厳しいものなのか。しかし外堀は全て埋まった。後は自分の覚悟を表明するだけだ。
昨日あの後M部長とO課長がH田部長から何を言われたか不明だった。拗れに拗れた退職話。 しかし営業部長にはっきりと意思表示をしろとお墨付きを頂いた以上、辞表を拒否されることはないだろう。
どうせ出すなら早いうちが良いだろうと、午前中のうちにM部長の席に言った。退職願を握りしめて。
「Mさん……」「はい」「これが私の結論です」
そう言って退職届を差し出した。
「……(H田部長の)話聞いても変わらなかった……」「はい」「……わかりました」
M部長は退職願の表裏をちらっと確認し、自分の机の引き出しに退職願をしまった。
この日、ようやく私の退職が正式に決まった。この後、退職願は人事部長に手渡され、その日のうちに社内掲示板に掲示があがるのだろう。
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ところが待てど暮らせど、社内掲示板に掲示が上がらない。
午後。そして、夕方………。
どうなっているんだ、いったい。まさかM部長の引き出しの中に眠りっぱなしじゃないだろうな。
なんとなく嫌な予感がしてきた……。
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