「人生一度は富士山だっ!」
これはそんなよくわからない信念に取り憑かれた人間による苦難の記録。
なぜ富士山なのか
きっかけは昨年のこの時期にまで遡ります。
弟が大学の研究室仲間と富士登山に行き、あろう事か初挑戦にも関わらず山頂でご来光、
そして日本最高峰制覇という完全制覇コンボを成し遂げたという自慢話を聞いたのでした。愚弟のくせに生意気な。
……愚弟にできて、兄である私が出来ないことがあろうか、いやない(反語)
このような話を聞くと、もういても立ってもいられません。
「来年、俺を富士山に連れて行け(※1)」
(※1)富士山に連れて行け……1人で行く勇気はない。
滅多に下げない頭を床にこすりつけて弟に懇願。富士山制覇できるのだったら、ナンボでも頭下げまっせ。
すると、
「1人で行けば?(・∀・)ニヤニヤ」
腹立つ!なんともつれない返事。
愚弟曰く、
「人生一度は富士山だ。でも二度行くヤツは馬鹿だ」
とまで言い切りやがった。
どうやら富士登山はよほどのトラウマになったようです。
だが、しかしっ!それは日頃の運動不足からトラウマになるのであって、(少なくとも弟より)運動している私にしてみれば富士山なんて、ちょろいちょろい。
日本最高峰とかいいながら所詮は観光登山だろ。
……程度にしか考えていませんでした。
今年。
再び弟の大学の研究室のメンバーが富士登山をすることになり、私にも富士登山のチャンスが巡ってきました。
そして私の隣には二度登ることになった馬鹿1人(←弟)
装備・行程
事前に弟から富士山を甘く見ない方が良いとアドバイスをもらい、2人してかなりの重装備を準備。 1人あたりの装備はこんな感じでしょうか。参考までに。
- リュック(30リットル級)
- 防寒具(スキーウェアと中に着る冬服)
- ヘッドランプ(→amazon)
- 雨具(上下カッパ)
- 軍手
- ストック(→amazon)
- 飲み物(1人2リットル)
- 携帯酸素(→楽天)
- スパッツ(→amazon)
- ハンドタオル(2枚)
- お菓子、非常食(甘いものを中心に)
- 靴(スニーカーでOK)
- シャツ(ドライメッシュのもの、替えも1枚)
- 靴下(ポリウレタン、ポリエステル、アクリルのもの)替えも1足
- ゴミ袋
そして今回、富士登山に挑む猛者たち。
- S藤さん
- 某大手家電メーカーを定年退職後、大学へ入学。登山のベテラン。
- T橋君
- 弟の同期。昨年は8合目で高山病のため断念。今年再挑戦。
- T嶋君
- 弟の同期。富士登山は初挑戦。運動大好きバスケ青年。
- 弟
- 昨年初挑戦で山頂&ご来光達成の経験者。
- 私
- 筆者。登山は約15年前に丹沢に行ったきり。
計画では、
夕方に須走口(※2)から出陣
↓
夜通し登山
↓
山頂でご来光
(※2)須走口……富士登山口の一つ。他には人気のある"河口湖口"、標高差2,300mの"御殿場口"、最短距離の"富士宮口"がある。
という強行軍。もっとも過酷とされるパターンです。 果たしていきなりこんな強行軍で登り切ることができるのだろうか……のっけから不安になります。
そして何よりも予報が最悪でした。 ここ1週間あたりは毎日快晴で猛暑続きだったのが、なぜかこの日だけは前線が南下するため雷雨。 さらに翌日は気温が上がらないという……、登山前から「天は我を見放したぁぁ!」(※3)と叫びたくなるような天気。
(※3)「天は我を見放したぁぁ!」……映画「八甲田山」より。オススメです。
この予報はかなり現実のものとなりそうでした。
御殿場駅でT嶋君を待っている間、突然の大雨に見舞われました。
ただ大雨も局地的に降ったり、止んだりを繰り返していたので「ひょっとしたら夕立では?」と淡い期待を抱かせてくれることが唯一の救いでした。
しかしそれ以上にメンバーの士気が下がりまくり。
「この雨で本当に登っていいんですか?」とか「止めようか……」という不安な声が渦巻き、
自分も「これいくらなんでも無理だよなぁ……別に富士山は逃げないし……、またチャンスはあるさ」と考え始めていた中で、
「これは大変だなぁ」と言いながら喜々として車を運転している男が約1名。
S藤さん……あなた鬼ですか。
須走口へ
富士山は五合目(標高約2,000m)までは車で上れます。
須走口へは"ふじあざみライン"という道路を走るのですが、左右にくねる上に雨と霧のために周囲は真っ白。
道はライトに照らされたセンターラインが辛うじて判別できる程度。
突然、前方からライトが薄ぼんやり見えてきたかと思うと対向車とすれ違う、という状態。
「これ富士山じゃなくてあの世に向かっているのでは?」
そんな会話がまことしやかに囁かれるほど、そこは別世界でした。
こんなあの世に繋がるかと思えるような道を彷徨すること数十分。森が開け、突然目の前に建物の灯りが飛び込んできました。
ついに須走口、新五合目(標高2,000m)に到着したのでした。
ここまでの苦難の道のり。
「着いたー!じゃ、お疲れっ!」
こんな言葉が思わず口をついて出そうでしたが、考えてみればようやくスタート地点にたどり着いたに過ぎません。
ここからが本番です。
果たして山頂は?ご来光は?どうなるのか。
(つづく)
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