自信満々に「つづく」とか書いておきながら、書く気がなくなるとそのまま放置して2度と続かないというのがお決まりのパターン。
「そもそもこんな日記誰も読みやしねぇだろ」
などと限りなく自己満に近い行為に、ふと気付いてしまうと全てが虚しく思えてくるものです。
ところが先日、高校時代の友人に久々に会ったとき、ふとしたきっかけで話題は自分のブログへ。
「俺は富士山の話が読みたいんだ。網戸の張り替えの話(→「素人でもできる網戸の張替え方」参照)なんて正直どうでもいい」
渾身の作品(?)を全否定され激しく落ち込むと同時に、半年前の話を未だに期待していくれているのかと感激したのでした。
お会いした方々から富士山の話を聞かれるとオチまで含めて全て話しているためさすがに新鮮味はないものの、密かに続きを期待しているマイノリティの方々と、
7月1日の山開きを目前にして「今年こそ富士登山!!」と計画を立てている方々が参考になるよう祈りつつ……半年ぶりに筆を執ることにします。
(2008.06.29)
八合目「江戸屋」(標高:3,350m)
午前1時58分。
出発後、約6時間30分。
八合目「江戸屋(下江戸屋)」到着。
本七合目からここまでの道のりでは特筆記すことはありません。強風に堪え忍びながら、岩場だらけの斜面をひたすら登るだけです。 登頂への気力を支えるのは「山頂というゴールがあること」「ご来光」の2点のみ。
歩いている最中、何度「リタ(※1)しようか……」というセリフが過ぎったか判りません。もし目の前に下山用の乗り物があったならば、 嬉々として山頂を諦めていたかもしれません。それぐらい朦朧とした状態でした。
(※1)リタ……リタイヤの意。途中で諦めること。某ネットワークゲームでよく使われる文句。
思考停止
ほんの数時間前まで「富士登山なんて所詮ハイキング」などとアホなことを考えていた自分がいましたが……。
本八合目には3軒の山小屋が軒を連ねています。本八合目で道が二手に分かれているのですが、左側に曲がると「胸突江戸屋」の方向。 山頂へはこの山小屋の前を通って向かいます。そして道なりに右側に行くと「富士屋ホテル」へ。この先は行き止まり(※2)だったように思います。
(※2)この先は行き止まり……富士屋ホテル側からでも山頂に行けるようです。
よくよく見ると登山道に案内板が立っていて、左側に曲がるべきことが判るのですが、いまは深夜。
そして意識も半ば朦朧としながら幽鬼の如くただフラフラと歩いているだけでした。
思考などはるか昔に停止し、ただ前の人間の姿を追うだけになっていました。
そんなとき先頭を歩いていたS藤さんから「……道を間違えたっぽいね」という言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった記憶があります。
ほんの十数メートル斜面を下って上るだけなのに、一気に緊張というか気力の糸が切れ、その場に座り込んでしまいたいほど絶望感に襲われました。
以前にも書きましたが映画「八甲田山」で雪山で遭難した軍隊が帰路が発見できず万策尽きてしまい、指揮官が「天は我を見放したぁ!」と叫んだ瞬間、 部下たちが雪の中にバタバタ倒れる場面がありますが、あの光景が理解できたような気がします。
神は死んだ
午前2時35分。
出発後、約7時間。
本八合目「江戸屋(胸突江戸屋)」到着。
標高:3,400m
道を間違えて気力が萎えかけたりしましたが、出発してから約7時間。本八合目(標高3,400m)まで辿り着くことができました。
備え付けのベンチにヘナヘナと力無く座り、ただ体力が回復するのを待ちます。……とは言うものの、体力など一向に回復しないのですが。
正直、しゃべる気力すらありません。
遙か上にあり闇夜に浮かぶ明かりの多さは、それでも山頂が近いことを教えてくれました。
疲れ切ってしまい、心ここにあらずという状態でただぼんやりと光を目で追っていると、まさに急展開。
見えていた山小屋の灯りがどこからともなく漂ってきた霧にみるみる覆われて埋没していきました。
すぅっ、という感じでした。
遙か上の方だけでなく、自分たちの周囲もあっと言う間に霧の世界。
「あ……………」
時間にしてほんの5分も経過していなかったように思います。
「よみの国とはこんなのか」
自分の手帳にはこのような走り書きが記されていました。
山頂を目前にして、天候は急速に悪化していきました。
……これが山の天気の恐ろしさなのか。
大渋滞
だがしかし。
もうここまで来たら山頂を目指すしかありません。山の天気は変わりやすい。もしかしたら逆に急速に回復することがあるかもしれません。
ところで。
この8合目付近はどこからどう湧いてきたのか、信じられないほどの人間の数で埋め尽くされていました。
あとで調べたところによると8合目は他の登山道(河口湖口)と合流地点だったようです。
河口湖口は富士登山の中でももっともメジャーな登山道(←同時に人も多い)のため、登山者がみっしりと集結するのです。
さらには宿の扉が次々と開き、ご来光を目指す登山者たちがワラワラと出てきます。 まるで天空の城ラピュタからロボット兵たちが次々と羽を広げて飛び立ってゆく-まさにそんな状況。
同時にそれは夜明けが近いことを如実に示していました。
|┃三 ∩___∩
|┃ | ノ ヽ
|┃ ≡ / ● ● | <ご来光?話は聞かせてもらったクマー!
____.|ミ\___| ( _●_) ミ
|┃=___ |∪| \
|┃ ≡ ) ヽノ 人 \ ガラッ
つまるところ、登山道は人で溢れ返っていて、もはや大渋滞。
みんなが雁行状態になってのろのろと歩みを進めることになりました。そこには霧に浮かぶ光(=ヘッドライト)の列がただあるのみでした。
(つづく)
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