草津や箱根のように有名ではなく、知る人ぞ知る温泉地が神奈川県の厚木市に存在する。
その名も「七沢温泉」
厚木と言えば、本厚木駅周辺に代表されるような賑やかな地方都市をイメージするのだが、宮ヶ瀬に近い北部の方は 山々に囲まれたそれこそ秘境。
親が「七沢温泉よかったよ~」と自慢げにしゃべっていたのをふと思い出した。 調べたところによると「蟹工船」の作家 小林多喜二が篭っていた温泉地らしい。せっかくと思い三連休の最終日に行ってきた。
七沢荘がパラダイスだった件
七沢温泉には6軒ほどの旅館が営業していて、日帰り入浴も受け付けている。
旅館を適当にぐぐって探してみたが、ほとんどの旅館は日帰りは15時までの入浴だった。
こっちは出発したのが昼過ぎだったため、七沢温泉に15時までに到着することは不可能。もはや手遅れと思われた。
一緒につきあってくれたT橋先生からはもっとちゃんと調べなさいよと散々愚痴られたが、知らなかったものはしょうがない。
しかしである。そんな中で1軒だけ夜21時まで入れる旅館があった。そこが"七沢荘"。
親はどこの旅館に行ったのかは不明だが、すでに選択肢は七沢荘しか残されていなかった。
国道246号をそれるとあっという間に田園風景が広がり、遠くには山々が見えてきた。
そして"ようこそ七沢温泉郷へ"という案内をくぐりぬける頃には道は急に細くなり、気持ちも細くなっていった。
こんな道で対向したら脇の田んぼに転落する!というような道を抜けた先に"七沢荘"は存在した。
このフォントは脱力系であろうか。
webサイトには日帰りもやっていると書かれていたが、本当にやっているか不安になりながら入口の戸を開ける。
恐る恐るフロントで聞いてみると、サイトの情報通り日帰りもやっていて安心する。入湯料1,000円ナリ。まぁまぁの価格設定である。
フロントに「黄色い線に沿ってずっとお歩きください」と言われ、訳がわからないまま視線を廊下に向けると確かに廊下に黄色のテープが貼ってあった。
はじめは"宿泊でない日帰り客は廊下の端でも歩いてろ"という意味かと思っていたが、なんのことはない。 この七沢荘は増築を繰り返し建物が複雑になってしまい、露天風呂に行くまで館内をかなり歩かないといけない。客が迷わないための黄色い線だったのである。
そしてこの七沢荘に漂うパラダイス臭がたまらない。
心をしずめ、中心の玉の上に手を
かざしてみてください。
あなたは、何を感じますか…
宇宙の愛の波動を感じますか
何も感じません。
鉄塔の看板にはこのように書いてある。
船井幸雄先生
エヴァへの道で語る
零磁場の源泉
気源石 発祥の地七沢荘
意味がわかりません
舩井幸雄ってあの船井総研の?
そして極めつけがこれ。
世界に3台しかないという「宇宙パワーBOX」。
45分間 2,000円かよ
残念ながら扉は施錠されていて開かなかった。フロントに申し出れば使わせてくれるのだろうか……。
さすがにチャレンジしてみる勇気はなかったw
45分間も閉じ込められたら閉所恐怖症になりそう。
なぜにラッパズボン…?そして手に持っている道具は何!?
温泉とは戦いだ
と、まぁ露天風呂にたどり着くまでに、このような突っ込みどころ満載のパワースポット(?)がたくさんあるわけだ。
なんか「日本一波動温泉脱衣場入口」の文字が見えるが、突っ込む気力もない。
いよいよ温泉である。
七沢温泉の泉質はアルカリ性単純温泉。pH 9~10と高いアルカリ度を誇る。
マニアック温泉なので、客なんていないだろうと思っていたら脱衣所は人でごった返していた。
服を脱ぐにも一苦労。
そして温泉とは戦いであることを改めて思い知ったのだ。
洗い場は屋内にもあったが客が大勢いたため埋まっており、やむなく外の洗い場で体を洗うことになった。
しかし外の洗い場にはシャワーがなかった。桶にお湯をためるしかない。1月のこの寒さ。体が凍えるようだ。
しかもお湯と水が独立しており、熱湯を水で薄めなければならない。お湯を触れば激熱だし、水で薄めて体にかけるとぬるくて
たちまち凍えてくる。
寒い!→(お湯を触る)→熱い!→(水で薄めて体にかける)→ちょっと快適→(すぐ)寒い!→(お湯を触る)→熱い!→・・・以下ループ
終始こんな感じ。
体を申し訳程度に洗い、寒さに凍えながら温泉へダッシュ!そして温泉に足をつけると……熱っ!!
なんだこの温泉。超熱いんですけど!
上は大水、下は大火事なーんだ。というなぞなぞをふと思い出した。体は凍えているしお湯は超熱くて体を浸かれないし、いったいどうすればいいんだ。
湯船に入っていたオヤジが「そっちは熱いだろ」とニヤニヤしながら話しかけてきた。そして水で薄まっていて温くなっている場所を教えてくれた。
これまでは"温泉"といえば、食事処や休憩所が併設されている施設に行くことが多かった。
そこでは脱衣所は暖房完備で、洗い場も室温が調節されていて不便を感じることなく使っていた。しかしそれは言わば温泉の"ゆとり"だ。
本当の温泉とは、ここのように入るのに命を削る"戦い"の場であるべきなのかもしれない。
温泉はアルカリが強いだけあって、肌はぬるぬるする。
世の女性がたは"美肌効果"と喜んでいるようだが、なんてことはない。アルカリなので皮膚の表面が溶けているだけだ。
これ薄い皮膚が露出している剥けたチ○コとか、どうなってしまうのだろう。梅○のようにでろでろと溶けてしまうのか…。
浸かってしまえば温泉は最高だった。
そしてこのパラダイス臭漂う温泉旅館がまたたまらない。
次は宿泊してみればもっとパラダイスが味わえるかもしれない。そんな不思議温泉だった。
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