遠距離通勤をしている私は毎朝確実に座るために始発の電車に乗るようにしている。この始発は急行で行くよりもさらに時間がかかってしまうのだが、多少時間はかかっても座って寝られることが重要。この始発のおかげで終電帰りが続いても辛うじて体力と心の平衡を保っていられると言っても過言ではありません。
そんな状況だから私が席を譲ることはまずあり得ないのですが、自分自身にどういう気持ちの変化があったのか・・・お年寄りに席を譲ることにしました。
それはいつもの車中。新宿までおそらくまだ40分以上はかかると思われる付近。いつもの如く、こくりこくりと眠りに誘われながら電車に揺られていた朝の通勤時間。
とある駅で、一人のお年寄りが杖をつきながら覚束ない足取りで乗り込んできました。当たり前のことですがもう座席は空いていません。お年寄りは私の2つ隣りのオッサンの前に立ちました。もちろんオッサンは爆睡中。さらに周囲にそのお年寄りに席を譲ろうというそぶりを見せる人間は誰もいないようです。
いつもなら年寄りなど真っ先に無視するのですが、今日はさすがにこれはマズいかもしれないと思った。このまま発車したら恐らくそのお年寄りはぶっ倒れるんじゃないか━━━━この私にそう思わせるほどのお年寄りの様子。しかし終点までは遙か遠い。しかも車内がちょうど混み始めた頃。ここで席を立ったら恐らく終点まで座れまい。しかし・・・。
このまま放置 → 年寄りぶっ倒れる → 救急車(霊柩車?) → 電車遅延
こんな図式がまざまざと脳裏に浮かびます。しかしここで席を立っては・・・。少しの葛藤の後、
「どうぞ。お座りになりますか?」
席を譲った自分がそこにいました。やはり人として大切なことは思いやりと年上への敬いの精神ではないでしょうか。情けは人のためならず。この当たり前とも言える小さな親切がたくさんの人に伝搬してこの殺伐とした世の中が少しでも良くなるならば、これ以上の幸せはありません。
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